近年、「全世代型社会保障」という言葉を耳にする機会が増えました。一見、理想的に思えるこの仕組み。しかし、実際に“得をする人”と“損をする人”が生まれるのが現実です。特に子どもがいない共働き世帯(DINKs)などは、今後どのような負担がのしかかるのでしょうか。本稿では、社会保障改革の本音と家計への影響を読み解きます。
全世代型社会保障とは「みんなでみんなを支える制度」
社会保障というと年金・医療・介護などを連想しますが、従来は「現役世代が高齢者を支える」構造が前提でした。しかし、急速な少子高齢化の進行により、これまでの仕組みは限界に。そこで登場したのが「全世代型社会保障」です。
この考え方では、年齢に関係なくすべての国民が、可能な範囲で支え合うことで、子育て世代、働く世代、高齢者すべてに対して適切な保障を提供することが目的とされています。
応能負担の拡大がもたらす現実
全世代型社会保障を支えるのが、「応能負担」の考え方です。つまり、収入や資産の多い人ほど、より多くの保険料や税金を負担する仕組みです。
例としては、高額療養費制度の見直しや金融所得課税の強化があげられます。これらは主に高所得者をターゲットにした施策ですが、実際には中間層にも波及し、生活への影響が懸念されます。特にDINKsのように所得が比較的高く、子どもがいない家庭では、「給付」よりも「負担」の方が多くなる傾向が強まります。
子育て支援の恩恵と、それを支える世代
現在、政府は少子化対策として児童手当の拡充や「子ども・子育て支援金」の導入を進めています。この費用は、医療保険料に上乗せする形で徴収される予定で、保険加入者全員が負担対象になります。
つまり、子育て世帯は支援(給付)を受けつつ、同時に保険料という形で負担もしています。一方、子育てを終えた世帯や子どものいない家庭は、支援を受けずに負担のみ増える構造になりやすいのです。
一生涯で見る「給付と負担」のバランス
社会保障制度の根幹は、「人生全体で見たときに給付と負担が釣り合うこと」。例えば、子育て期までは給付が多く、定年以降は負担が増えるといった傾向があります。
DINKs家庭では、ライフステージにおいて給付が少ない一方で、現役時代の所得が高いために負担が重くなる構造です。逆に、障害者世帯や低所得世帯では、継続的に支援が受けられる可能性が高く、「給付>負担」となることもあります。
ライフプランの再設計が求められる時代へ
今、社会保障制度は大きな転換点を迎えています。政府が推進する地域共生社会や全世代型社会保障の本質は、「持続可能性」と「支え合い」。しかしそれは、誰もが公平に得をする仕組みではありません。
私たちはそれぞれ異なる人生設計を持っています。だからこそ、制度の方向性を正しく理解し、自身の家計やライフプランにどう影響するのかを冷静に見極める必要があります。
全世代型社会保障は理想であると同時に、現実的な負担を伴う仕組みです。だからこそ、今一度立ち止まり、自分の人生にとってどんな選択がベストかを見直す時が来ているのかもしれません。
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