定年後に受け取る退職金。老後の安定した生活資金として頼りにされる一方、その使い道によっては生活を一層苦しくしてしまうこともあります。72歳の野口稔さん(仮名)は「退職金の誤算」で苦しい生活を送る一人です。
想定外の早期退職とローン残債
野口さんは35歳で戸建て住宅を購入し、3000万円を35年ローンで借り入れました。65歳の定年時に退職金で残り600万円のローンを一括返済する予定でしたが、62歳で病気により退職。残債は970万円も残っていました。退職金は治療費に消え、65歳を待たずに繰上げで年金を受給。その結果、年金は18%減額され、月々の手取りは約12.7万円に。
生活費とローン返済で手一杯となり、繰上げ返済は夢と消えました。病気のため返済額の減額を銀行に頼み、完済まであと3年という状況に追い込まれています。
築40年の持ち家、次は大規模修繕問題が…
ようやく完済が見えてきた矢先、今度は自宅の老朽化が深刻化。外壁の剥がれ、水回りの不調などが目立ち、業者からは「大規模修繕が必要」と言われました。見積もりは最低250万円以上。定年後の限られた収入で賄うには、あまりに重い出費です。
「もう家を売って賃貸に移ろうか」とも考えましたが、思わぬ壁が立ちはだかります。
高齢者に厳しい賃貸事情、「お金があっても借りられない」
高齢者が賃貸住宅に入居することは想像以上に困難です。全国の賃貸オーナー調査によると、高齢者の入居を「受け入れていない」オーナーは41.8%。保証人の確保、健康状態、孤独死リスクなどが理由です。
野口さんも「資金はあるのに、貸してもらえない」と現実を痛感し、自宅に住み続けるしかないという結論に至りました。
「死ぬまでローン生活」の現実
新築注文住宅を建てた世帯主の平均年齢は約45歳。ローン期間が30年前後であれば、完済は70代が一般的です。多くの人が「退職金で完済」「年金受給前に完済」と計画しますが、野口さんのように予期せぬ病気や早期退職で予定が狂うケースも少なくありません。
老後資金やローン返済の計画において、「65歳まで働けるはず」という前提は非常にリスキーです。現実には健康問題、介護、家族の事情など、働き続けられない可能性も高く、そうした事態に備えて柔軟な計画が求められます。
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