
2025年2月13日、日産自動車本社で記者会見に臨む内田誠社長兼CEO(写真=FRANCK ROBICHON/EPA/時事通信フォト)
2025年2月、日本の自動車業界に激震が走った。ホンダと日産自動車が進めていた経営統合協議が突然打ち切られたのだ。早稲田大学ビジネススクールの長内厚教授は「この決断は、20年前に日本のエレクトロニクス産業が衰退した歴史と驚くほど似ている」と警鐘を鳴らす。
対等統合から子会社化提案へ - 交渉決裂の真相
当初、両社は「対等な関係」での統合を強調していた。しかし交渉過程でホンダが突如提示したのは、実質的な日産の子会社化案だった。時価総額で5倍もの差がある両社において、「真に対等な統合」など最初から幻想だったのかもしれない。
背景にはデジタル化という共通の脅威があった。EV(電気自動車)やSDV(ソフトウェア定義車両)時代に向け、巨額投資が必要な中で規模拡大を急ぐ両社だが、特に日産はより切迫した事情を抱えていた。
市場から取り残される日産 - 「今売れるクルマ」不在という危機
かつて強みとした中国市場では現地EVメーカーに押され苦戦。北米でも状況は深刻だ。トヨタやホンダがハイブリッド車(HEV)で好調な一方、日産独自技術「e-Power」は高速走行時の燃費性能に課題があり、北米市場向け有力商品がないのが現状だ。
「e-Powerシステムの問題点は根本的だ」 専門家によれば、 「モーターのみで高速走行するシリーズ方式では燃費効率に限界があり、 まさにアメリカのような広大な国土を持つ市場には不向き」 との指摘がある。カルロス・ゴーン時代からの効率偏重経営も影を落とす。 将来投資よりも短期利益追求路線を取り続けた結果、 現在有効打となる商品ラインアップを持たないという皮肉な状況だ。
【特集】日本メーカーのEV戦略最前線
失われたチャンス - 統合によるシナジー可能性とは
仮に統合実現していれば、 ホンダのHEV技術活用により即座に北米・東南アジア市場向け商品投入も可能だった。 生産能力過剰(年間500万台設備に対し330万台販売)という課題も、 グループ内調整である程度緩和できたはずだ。
"単独再建路線こそ最大のリスク"
ある部品メーカー関係者はこう漏らす。
「最終的に外資傘下に入る羽目になれば
'あの時組んでいれば'との後悔しか残らない」
"規模こそ命綱"
デジタル化時代における厳しい現実がある。
ソフトウェア開発コストは固定費であり
半導体生産にも規模経済が働くため
上位企業のみが収益を得やすい構造になっている。
主要日本メーカー比較(2024年度概算) | ||
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時価総額(兆円) | 主幹技術 | |
トヨタ td >< td align ="right">45.8 td >< td >THSハイブリッド td >< / tr > | ||
9.6 - e:HEVハイブリッド - FCV燃料電池 -航空宇宙事業 | ||
※出所:各社IR資料をもとに編集部作成※
次世代戦略における選択肢
> >注記:当記事における意見部分については筆者の個人的見解を含みます< |