健康診断でコレステロールや中性脂肪の数値が基準値を超えていると指摘された場合、それを放置することは極めて危険な行為だ。内科医で糖尿病専門医の市原由美江氏によれば、これらの数値の異常は動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの重大な疾患リスクを高めるだけでなく、脂肪肝から肝臓がんに進行する可能性もあるという。しかし一方で、コレステロールは体に必要な成分でもあり、単に数値が低ければ良いというものでもない。健康診断の結果を正しく理解し、適切な対策を講じることが何よりも重要だ
コレステロールと中性脂肪が体に与える深刻な影響
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が過剰になると、血管内にプラークが形成され、動脈硬化を引き起こす。これが進行すると、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの命に関わる疾患のリスクが大幅に上昇する。一方、HDLコレステロール(善玉コレステロール)は余分なコレステロールを回収する役割を担っており、この数値が低すぎる場合も問題となる
中性脂肪の数値が高い場合、内臓脂肪の蓄積や脂肪肝のリスクが高まる。脂肪肝は放置すると肝硬変や肝臓がんに進行する可能性があり、糖尿病の発症リスクも上昇させる。ただし、中性脂肪はエネルギー源としても重要であり、極端に低すぎると倦怠感などの症状が出ることもある。健康診断の結果を総合的に判断し、バランスの取れた対策が必要だ
健康診断で「C判定」や「D判定」が出た場合の対処法
健康診断の脂質検査でD判定(要医療)が出た場合は、すぐに内科を受診する必要がある。C判定(要経過観察)の場合でも、生活習慣の見直しが不可欠だ。LDLコレステロールやnon-HDLコレステロールが高い場合は、動物性脂肪を含む食品(肉の脂身、加工肉、乳製品など)の摂取を控えることが推奨される。また、中性脂肪が高い場合は、炭水化物の過剰摂取や飲酒を控え、適度な運動を取り入れることが効果的だ
ただし、コレステロール値はホルモンバランスの影響も受ける。特に女性ホルモンや甲状腺ホルモンの減少によって数値が上昇することがあるため、食事改善をしても数値が下がらない場合は、甲状腺機能の検査を受けることが望ましい
「コレステロールは気にしなくていい」は本当か?
近年、「コレステロール値に一喜一憂する必要はない」という説も見られるが、これは誤解を招きやすい。確かに、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では2015年からコレステロールの摂取上限値が撤廃された。これは、食事からのコレステロールが血液中の悪玉コレステロールに与える影響が個人差が大きいためだ。しかし、これは「コレステロールを無制限に摂取して良い」という意味ではない
特に、脂質異常症や糖尿病、慢性腎臓病などの基礎疾患がある人は、コレステロールの摂取量を1日200mg未満に抑えることが推奨されている。健康な人でも、バランスの取れた食事と適度な運動を心がけることが、長期的な健康維持には不可欠だ
専門医が提案する今日から始められる改善策
市原由美江氏は、コレステロールや中性脂肪の数値を改善するために、以下のポイントを推奨している
- 動物性脂肪を控える:肉の脂身や加工肉、バターなどの摂取を減らし、魚や植物性タンパク質を積極的に取り入れる。
- 食物繊維を多く摂る:野菜、海藻、きのこ類などに含まれる食物繊維は、コレステロールの吸収を抑える効果がある。
- 適度な運動を取り入れる:ウォーキングや軽い筋トレなど、継続可能な運動習慣を身につける。
- アルコールと糖質を控える:中性脂肪が高い人は、特にビールや甘いお酒、清涼飲料水の摂取を減らす。
- ストレス管理:過度なストレスはホルモンバランスを乱し、コレステロール値に影響を与えることがある。
これらの対策を実践することで、健康診断の数値改善だけでなく、全身の健康状態の向上も期待できる。
まとめ:健康診断の結果を「他人事」にしない
コレステロールや中性脂肪の数値は、単なる数字ではなく、体からの重要なサインだ。放置すれば重大な疾患につながる可能性がある一方、適切な対策を講じればリスクを大幅に減らすことができる。健康診断の結果を真摯に受け止め、今日からできる改善を始めることが、将来の健康を守る第一歩となる
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