日本では、高齢化社会の進展とともに、死後の埋葬方法に対する考え方が大きく変化しています。従来の墓石に代わり、散骨や樹木葬といった自然葬を選ぶ人が急増しています。しかしながら、この新しい埋葬スタイルには法的整備の遅れなど、解決すべき課題も浮き彫りになっています。
三重県大台町にある「いのちの森」は注目を集める森林自然葬墓地です。ここでは契約者が亡くなると、特別な木製骨壺に納められた遺骨が森の中に埋葬されます。時間の経過とともに遺骨が土へと還っていくこの方式は、「自然との共生」を求める現代人のニーズにマッチしており、すでに40人以上の事前契約があり12人が永眠しています。
しかしながら、こうした新しい埋葬方法には地域社会との摩擦も生じています。森林ジャーナリストの田中淳夫氏は「現行法では散骨や樹木葬に関する明確な規定がなく、地域住民とのトラブルにつながる可能性がある」と指摘します。特に私有地での散骨行為などは近隣住民からの理解を得にくいケースも報告されています。
終活サービス企業による最新調査によると、昨年新規需要の48.5%が樹木葬関連であったことが明らかになりました。これは従来型墓石を大きく上回る数字です。「後継者不足」「墓地管理負担軽減」「環境配慮志向」という3つの要因がこの傾向を後押ししていると考えられます。
本来の樹木葬は生きた樹木を墓標とするのが特徴ですが、「名ばかり樹木葬」と呼ばれる問題事例もあります。実際にはコンクリート施設内で遺骨保管を行うだけの場合もあり、「自然回帰」という理念からかけ離れたサービス展開もあるようです。「低価格」「永代供養付き」といったキャッチコピーで需要を取り込むビジネスモデルにも注意が必要です。
伝統的な墓スタイルから脱却する動きは今後さらに加速すると予想されますが、「法整備」「地域調整」「理念堅持」という3つの柱で適切な発展方向を見出す必要があります。「死後も自然循環システムへ参加したい」という現代人の願いに応えつつ、社会的受容性も考慮したバランス感覚が求められています。
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